Grandream
AIエージェント、インフラ不要で作れる時代が来た:Claude Managed Agents 実践レポート
Anthropic が2026年4月に公開した「Claude Managed Agents」を実際に使ってみた。サーバーも API キーも不要で AI エージェントを Slack や Notion と連携させることができた。この記事では、仕組みの解説・実際のセットアップ手順・正直な使用感をまとめます。
この記事で分かること
- Claude Managed Agents とは何か
- 実際の作り方・セットアップ手順
- MCP で外部ツール(Notion)を繋ぐ方法
- 正直なレビュー:できること・できないこと
- Claude Code との使い分け
Claude Managed Agents とは何か
Claude Managed Agents でできること
- PC を閉じても動く — エージェントが Anthropic のクラウド上で動くため、24時間稼働できる
- サーバー構築ゼロ — 実行環境の構築・デプロイは Anthropic が引き受ける。必要なのはエージェントの定義だけ
- 外部ツールと繋げる — Slack・Notion・GitHub などを OAuth ワンクリックで接続できる(API キーの手入力不要)
- セキュア設計 — 認証情報は Vault(専用の金庫)に保管され、AI が直接触れることはない。Anthropic のプロキシ経由でアクセスするため、API キーが会話ログに漏れるリスクを防いでいる
- ログが可視化される — セッションの実行ログがダッシュボードでリアルタイムに確認できる
5つの構成要素
Managed Agents を使うとき、以下の5つが登場します。 最初は混乱しがちなので、まず全体像を把握してください。
要素 | 役割 | 例 |
|---|---|---|
Agent | AIの設定(性格・ルール・使えるツール) | 「サイトを分析して Slack に報告する担当者」 |
Environment | AIが動くクラウドコンテナ | 「ネット接続可・Python 3.12 入り」の作業部屋 |
Session | Agentの1回の実行 | 「Slack への投稿タスク1回分」 |
Vault | 認証情報の金庫 | Slack や GitHub のパスワードを安全に保管 |
MCP | 外部ツールとの接続プロトコル | SlackやGitHubとの「コンセント」 |
実際に作ってみる
今回作るのは 「ビジネスリサーチエージェント」 です。
- できること:テーマを投げると、ウェブで多角的に調査し、根拠付きのレポートを日本語で作成
- 保存先:Notion データベースに自動記録
- ユースケース:企業調査・競合分析・市場調査など
Step 1: Console を開いてクイックスタートへ
platform.claude.com にアクセスし、左サイドバーの 「マネージドエージェント」→「クイックスタート」 を開きます。
テンプレートが10種類ほど並んでいますが、今回は選ばずに進めます。
Step 2: テンプレートを使わずチャットで作る
テンプレートを選択せず、画面下部のチャット入力欄 にエージェントの説明を日本語で直接書いて送信します。
あなたはビジネスリサーチエージェントです。
与えられたテーマについてウェブで多角的に調査し、信頼性の高い情報源から
根拠付きのレポートを日本語で作成します。
調査完了後は Notion データベースに結果を保存してください。
送信すると、ウィザードが自動で YAML を生成します。 入力した短い説明から、ウィザードが詳細なシステムプロンプトに自動で拡張してくれます。 Notion MCP の設定も自動で追加されています。
name: ビジネスリサーチエージェント
description: >-
与えられたテーマについてウェブで多角的に調査し、信頼性の高い情報源から
根拠付きのレポートを日本語で作成。調査結果をNotionデータベースに保存します。
model: claude-sonnet-4-6
system: |-
あなたはビジネスリサーチエージェントです。与えられたテーマについてウェブで
多角的に調査し、信頼性の高い情報源から根拠付きのレポートを日本語で作成します。
調査では複数の視点(市場動向・競合・事例・リスク等)を網羅し、各情報に情報源URL
を明記してください。レポートは「概要>詳細分析>まとめ・示唆」の構成で作成します。
調査完了後は必ずNotionデータベースに結果を保存してください。
mcp_servers:
- name: notion
url: https://mcp.notion.com/mcp
type: url
tools:
- type: agent_toolset_20260401
- type: mcp_toolset
mcp_server_name: notion
default_config:
permission_policy:
type: always_allow
skills: []
「次へ:環境を設定 →」 をクリックします。
Step 3: ネットワーク設定を選ぶ
ウィザードが聞いてきます:
このエージェントはウェブ検索とNotionへのアクセスが必要です。
ネットワーク設定はどうしますか?
→ 「制限付き(推薦)」 を選択してください。
「無制限」ではなく「制限付き」で十分です。Managed Agents のウェブ検索・ウェブフェッチのビルトインツールと Notion MCP は、制限付きネットワークでも問題なく動作します。「無制限」はエージェントが bash から任意のサーバーに直接接続できる設定で、通常のリサーチ用途には不要です。
環境が自動作成されます:
✓ 環境を作成しました「次へ:セッションを開始 →」 をクリックします。
Step 4: Notion の OAuth 認証(ここが重要)

ウィザードが「このMCPを使用するには認証が必要です」と表示します。「接続」 ボタンをクリックしてください。
ブラウザの新規ウィンドウで Notion の OAuth 認証画面が開きます。

ワークスペースが表示されているのを確認して 「続行」 をクリック。これだけです。
API キーもトークンも手入力する必要は一切ありません。
💡 なぜトークン不要なのか Notion MCP は OAuth に対応しており、Anthropic が認可フローを仲介します。「続行」をクリックするだけで、トークンの発行・Vault への保存・定期更新まで Anthropic が自動でやってくれます。
認証が完了すると Vault に自動登録されます:

「テスト実行」 をクリックします。
Step 5: テスト実行——リサーチを依頼する
テストパネルの右側入力欄に調査依頼を送ります。 以下のプロンプトは自動でClaudeが提案してくれたものです。
「生成AIを活用したビジネスプロセス自動化」について調査し、市場動向・主要プレイヤー・導入事例・リスクを含む日本語レポートを作成してNotionに保存してください。
デバッグタブ に切り替えると、ツール呼び出しがリアルタイムに流れます。


トランスクリプトタブ に切り替えると、以下のようなサマリーが表示されます。
Web Fetch, Web Search ×2 → トップページ + 関連情報を並行取得
Web Fetch ×3, Web Search → 会社概要・技術スタック・実績を並行取得
Web Fetch ×3 → 採用情報・実績・自社サービスページを取得
Notion-search → Notion DB に既存ページがないか確認
Notion-create-pages → 新しいレポートページを作成
Session idle → 完了
約4分で企業リサーチが完成しました。
Step 6: Notion で結果を確認する
Notion を開くと、構造化されたレポートが自動生成されています。

レポートには以下が含まれています:
- エグゼクティブサマリー
- 主要プレイヤー分析
- 業務別の活用領域と導入事例
- 主要なリスクと課題
- まとめと戦略的示唆
- 主要情報源
単純な箇条書きではなく、調査目的に合わせた分析レポートになっているのが特徴です。
フロントエンドアプリから API を呼び出す
Console のテスト実行で動作確認できたら、次は自前のアプリからエージェントを呼び出すステップです。Managed Agents は HTTP API を持っており、あらゆる言語・フレームワークから呼び出せます。
Console の「統合」ステップで API を把握する
クイックスタートの最後のステップ「統合」を開くと、サンプルコードが表示されます。


「Claude Codeでスキャフォールド」ボタンを押すと、Claude Code にプロンプトが自動で渡されます。
managed-agentsスキルを使用してください(最初に `/managed-agents` を呼び出します)。Anthropic SDKを介して、Anthropicエージェント `agent_xxx` と対話する最小限のアプリの雛形を作成してください。
`client.beta.sessions.create` (環境ID:`env_xxx`)を使用してセッションを作成し、`client.beta.sessions.events.stream` を開いてください。次に、`client.beta.sessions.events.send` を介して `user.message` イベントを送信し、ストリーミングされる `agent.message` のテキストを出力します。
`session.status_idle` が発生したら処理を終了し、エラーが発生した場合は適切に終了するように実装してください。このプロンプトをClaudeCodeに実行させ、フロントエンドアプリを実装します。

フロントエンドからリサーチを依頼する
フロントエンドアプリの実装が完了しました。 入力欄に調査依頼を送ります。

Claude Console の セッション画面を見ると、フロントエンドから送られたリクエストがリアルタイムでエージェントに渡っていることが確認できます。

Web Fetch・Web Search を並列実行しながら情報を収集し、Notion にレポートを保存。フロントエンドのチャット UI にも応答がストリームで流れてきます。

Notion を開くと、企業リサーチレポートが保存されています。

正直なレビュー
良かった点
① ウィザード形式でコードなしにエージェントを作れる
自然言語でエージェントを説明するだけで、YAML・MCP設定・環境構築まで自動で生成される。コードを一行も書かずにリサーチエージェントが完成した。
② MCP 接続が OAuth ワンクリックで完結する
Notion・Slack・GitHub などを繋ぐとき、従来は API キーの発行・環境変数への設定が必要だった。Managed Agents では「Connect」ボタンを押してブラウザでログインするだけ。トークンの発行・保管・自動リフレッシュまで Anthropic が引き受ける。
③ セッションのトレース機能が充実していてデバッグが容易
ツール呼び出しのタイムライン・引数・実行時間・token 数がひと目で確認できる。「どのステップで遅くなっているか」「Notion への保存が失敗したか」がすぐに分かる。Claude Code でのデバッグより格段にやりやすい。
④ 「Claudeに質問する」でエラー分析・改善提案を即得られる
セッション完了後にボタン一つでそのログを AI が分析し、改善提案をくれる。デバッグの出発点として非常に有効。
⑤ エージェントが自律的にエラーをリカバリーする
ツール呼び出しが失敗しても、エージェント自身が別の手段で再試行する。今回のリサーチでも、あるページの取得に失敗すると別のクエリで検索し直していた。
注意点
① エージェントの「実行」はできる。「トリガー」は自前で用意する
Managed Agents が得意なのは「タスクを受け取って自律的に完了させること」。一方、いつ・何をきっかけに動かすか(トリガー)は自分で設計する必要がある。
トリガー | 実現方法 |
|---|---|
手動(フロントエンド) | 今回の構成。アプリの送信ボタンで |
定期実行 | Cloud Scheduler や cron で API を定期呼び出し |
Slack スラッシュコマンド | Slack Bolt でコマンドを受け、バックエンドがセッション作成 |
Webhook | 外部サービスのイベントをバックエンドが受け、セッション作成 |
Slack や定期実行などを自動トリガーにしたい場合、別途バックエンドサーバーの実装が必要になる。
② ローカル MCP(stdio 型)は使えない
Claude Code の ~/.claude/settings.json に設定するタイプの MCP(stdio 型)は、Managed Agents のクラウド環境では動作しない。公式ドキュメントに「リモート MCP サーバー(HTTP エンドポイントを持つもの)のみ対応」と明記されている。
対応:
type: url(Notion MCP・Slack MCP など) 非対応:type: stdio(ローカルで動くカスタム MCP)
独自の MCP を使いたい場合は、それを HTTP サーバーとして公開する必要がある。
③ MCP 認証は「接続」ボタン経由が唯一の正解
Vault 画面からトークンを手動で貼り付けても認証が通らない。ウィザードの「接続」ボタンから OAuth フローを通すこと。これを知らずにハマるケースが多い(実際に筆者もハマった)。
④ 2026年4月時点でベータ版のため、仕様変更の可能性がある
API ヘッダーに anthropic-beta: managed-agents-2026-04-01 が必須で、今後バージョンが変わる可能性がある。本番投入前にドキュメントの最新版を確認すること。
こんな人に向いている
- AIエージェントを初めて試したい人 — ウィザード形式でコードゼロ。数分で動くものが作れる
- API キーや認証情報を安全に扱いたい — 認証情報は Vault に隔離され、AI が直接参照することはない。プロキシ経由のアクセスのため、キーが会話ログに漏れるリスクがない
- サーバーやコンテナを自前で用意したくない — 実行環境の構築・スケーリング・メンテナンスはすべて Anthropic が担う。VPS・Docker・クラウドインフラの知識が不要
こんな人には向いていない
- Slack や定期実行で自動トリガーしたい — 別途バックエンドの実装が必要。シンプルな自動化なら n8n や Make の方が早い
- ローカルで動くカスタム MCP を使いたい — stdio 型は非対応。Claude Code の方が柔軟に使える
- コストを徹底的に抑えたい — セッション時間 × 従量課金。頻繁に回すなら Claude Code + cron の方が安くなるケースがある
Claude Code との比較
Managed Agents vs Claude Code
Managed Agents | Claude Code | |
|---|---|---|
動作場所 | クラウド(24時間) | あなたの PC |
対話的な作業 | ❌ | ✅ |
無人で回し続ける | ✅ | ❌(PC を閉じると停止) |
カスタマイズの自由度 | 中 | 高 |
月額コスト | 従量制 | Pro/Max サブスク |
シンプルな判断基準:
- 対話しながら作業したい → Claude Code
- 無人で定期実行したい → Managed Agents(+ Cloud Scheduler)
Coming Soon:これから来る機能
現在ベータ版のため、まだ使えない機能があります。ただし Anthropic がすでに発表しているものなので、近い将来に登場するはずです。
Outcomes(成功基準の自己評価)
エージェントに「完了条件」を設定できます。条件を満たすまでエージェントが自律的に試行錯誤を繰り返す仕組みです。
例:
成功条件: Lighthouse スコアが 90 以上
→ AI がコード改善 → スコア計測 → 未達なら修正 → 再計測 → 合格まで繰り返すMulti-agent orchestration(エージェントの分業)
1つの親エージェントが複数の子エージェントに仕事を振る仕組みです。公式デモでは、インシデント対応を例に「コーディネーター → 3人の専門家エージェント → 結果を統合」というフローが紹介されています。
Persistent memory(セッションをまたいだ記憶)
現在は各セッションが独立しており、「先週の分析結果」を次のセッションが覚えていません。Persistent memory が実装されれば「先週比でCVが2%下がった」のような比較分析が自然にできるようになります。
まとめ
正直な感想から言うと、思ったより制約が多かったです。
セットアップ体験は本当に優れています。ウィザードで数分でエージェントが完成し、Notion の接続はボタン1つで終わります。リサーチの出力クオリティも実用レベルでした。この部分は期待通りでした。
致命的な制約が1つあります。エージェントを「動かすこと」はできますが、「いつ動かすか」は自分で用意しなければなりません。 定期実行・Slack コマンド・Webhook 連携は、別途バックエンドを実装して初めて成立します。「インフラ不要」と謳いながら、実際に使い物にするにはインフラが要る。ここが一番モヤッとした点です。
Outcomes(完了条件の自律評価)や Multi-agent orchestration が実装されても、トリガーの問題は残ります。機能が増えても、動かすきっかけを自前で作る手間は変わらないからです。ツールとして面白いのは確かですが、「これで完結する」という感覚にはまだ遠いというのが正直な評価です。今後に期待します。
参考
Grandream
株式会社グランドリーム
AI・システム開発のプロフェッショナルチームです。AIエージェント・業務自動化・Webシステム開発などを手がけています。
