Grandream

Grandream

公開: 11 min read

AIエージェント、インフラ不要で作れる時代が来た:Claude Managed Agents 実践レポート

AIエージェント、インフラ不要で作れる時代が来た:Claude Managed Agents 実践レポート

Anthropic が2026年4月に公開した「Claude Managed Agents」を実際に使ってみた。サーバーも API キーも不要で AI エージェントを Slack や Notion と連携させることができた。この記事では、仕組みの解説・実際のセットアップ手順・正直な使用感をまとめます。

この記事で分かること

  • Claude Managed Agents とは何か
  • 実際の作り方・セットアップ手順
  • MCP で外部ツール(Notion)を繋ぐ方法
  • 正直なレビュー:できること・できないこと
  • Claude Code との使い分け

Claude Managed Agents とは何か

Claude Managed Agents でできること

  • PC を閉じても動く — エージェントが Anthropic のクラウド上で動くため、24時間稼働できる
  • サーバー構築ゼロ — 実行環境の構築・デプロイは Anthropic が引き受ける。必要なのはエージェントの定義だけ
  • 外部ツールと繋げる — Slack・Notion・GitHub などを OAuth ワンクリックで接続できる(API キーの手入力不要)
  • セキュア設計 — 認証情報は Vault(専用の金庫)に保管され、AI が直接触れることはない。Anthropic のプロキシ経由でアクセスするため、API キーが会話ログに漏れるリスクを防いでいる
  • ログが可視化される — セッションの実行ログがダッシュボードでリアルタイムに確認できる

5つの構成要素

Managed Agents を使うとき、以下の5つが登場します。 最初は混乱しがちなので、まず全体像を把握してください。

要素

役割

Agent

AIの設定(性格・ルール・使えるツール)

「サイトを分析して Slack に報告する担当者」

Environment

AIが動くクラウドコンテナ

「ネット接続可・Python 3.12 入り」の作業部屋

Session

Agentの1回の実行

「Slack への投稿タスク1回分」

Vault

認証情報の金庫

Slack や GitHub のパスワードを安全に保管

MCP

外部ツールとの接続プロトコル

SlackやGitHubとの「コンセント」

実際に作ってみる

今回作るのは 「ビジネスリサーチエージェント」 です。

  • できること:テーマを投げると、ウェブで多角的に調査し、根拠付きのレポートを日本語で作成
  • 保存先:Notion データベースに自動記録
  • ユースケース:企業調査・競合分析・市場調査など

Step 1: Console を開いてクイックスタートへ

platform.claude.com にアクセスし、左サイドバーの 「マネージドエージェント」→「クイックスタート」 を開きます。

テンプレートが10種類ほど並んでいますが、今回は選ばずに進めます。

Step 2: テンプレートを使わずチャットで作る

テンプレートを選択せず、画面下部のチャット入力欄 にエージェントの説明を日本語で直接書いて送信します。

あなたはビジネスリサーチエージェントです。
与えられたテーマについてウェブで多角的に調査し、信頼性の高い情報源から
根拠付きのレポートを日本語で作成します。
調査完了後は Notion データベースに結果を保存してください。

送信すると、ウィザードが自動で YAML を生成します。 入力した短い説明から、ウィザードが詳細なシステムプロンプトに自動で拡張してくれます。 Notion MCP の設定も自動で追加されています。

name: ビジネスリサーチエージェント
description: >-
  与えられたテーマについてウェブで多角的に調査し、信頼性の高い情報源から
  根拠付きのレポートを日本語で作成。調査結果をNotionデータベースに保存します。
model: claude-sonnet-4-6
system: |-
  あなたはビジネスリサーチエージェントです。与えられたテーマについてウェブで
  多角的に調査し、信頼性の高い情報源から根拠付きのレポートを日本語で作成します。

  調査では複数の視点(市場動向・競合・事例・リスク等)を網羅し、各情報に情報源URL
  を明記してください。レポートは「概要>詳細分析>まとめ・示唆」の構成で作成します。
  調査完了後は必ずNotionデータベースに結果を保存してください。
mcp_servers:
  - name: notion
    url: https://mcp.notion.com/mcp
    type: url
tools:
  - type: agent_toolset_20260401
  - type: mcp_toolset
    mcp_server_name: notion
    default_config:
      permission_policy:
        type: always_allow
skills: []

「次へ:環境を設定 →」 をクリックします。

Step 3: ネットワーク設定を選ぶ

ウィザードが聞いてきます:

このエージェントはウェブ検索とNotionへのアクセスが必要です。
ネットワーク設定はどうしますか?

「制限付き(推薦)」 を選択してください。

「無制限」ではなく「制限付き」で十分です。Managed Agents のウェブ検索・ウェブフェッチのビルトインツールと Notion MCP は、制限付きネットワークでも問題なく動作します。「無制限」はエージェントが bash から任意のサーバーに直接接続できる設定で、通常のリサーチ用途には不要です。

環境が自動作成されます:

✓ 環境を作成しました

「次へ:セッションを開始 →」 をクリックします。

Step 4: Notion の OAuth 認証(ここが重要)

ウィザードが「このMCPを使用するには認証が必要です」と表示します。「接続」 ボタンをクリックしてください。

ブラウザの新規ウィンドウで Notion の OAuth 認証画面が開きます。

ワークスペースが表示されているのを確認して 「続行」 をクリック。これだけです。

API キーもトークンも手入力する必要は一切ありません。

💡 なぜトークン不要なのか Notion MCP は OAuth に対応しており、Anthropic が認可フローを仲介します。「続行」をクリックするだけで、トークンの発行・Vault への保存・定期更新まで Anthropic が自動でやってくれます。

認証が完了すると Vault に自動登録されます:

「テスト実行」 をクリックします。

Step 5: テスト実行——リサーチを依頼する

テストパネルの右側入力欄に調査依頼を送ります。 以下のプロンプトは自動でClaudeが提案してくれたものです。

「生成AIを活用したビジネスプロセス自動化」について調査し、市場動向・主要プレイヤー・導入事例・リスクを含む日本語レポートを作成してNotionに保存してください。

デバッグタブ に切り替えると、ツール呼び出しがリアルタイムに流れます。

トランスクリプトタブ に切り替えると、以下のようなサマリーが表示されます。

Web Fetch, Web Search ×2       → トップページ + 関連情報を並行取得
Web Fetch ×3, Web Search       → 会社概要・技術スタック・実績を並行取得
Web Fetch ×3                   → 採用情報・実績・自社サービスページを取得
Notion-search                  → Notion DB に既存ページがないか確認
Notion-create-pages            → 新しいレポートページを作成
Session idle                   → 完了

約4分で企業リサーチが完成しました。

Step 6: Notion で結果を確認する

Notion を開くと、構造化されたレポートが自動生成されています。

レポートには以下が含まれています:

  • エグゼクティブサマリー
  • 主要プレイヤー分析
  • 業務別の活用領域と導入事例
  • 主要なリスクと課題
  • まとめと戦略的示唆
  • 主要情報源

単純な箇条書きではなく、調査目的に合わせた分析レポートになっているのが特徴です。

フロントエンドアプリから API を呼び出す

Console のテスト実行で動作確認できたら、次は自前のアプリからエージェントを呼び出すステップです。Managed Agents は HTTP API を持っており、あらゆる言語・フレームワークから呼び出せます。

Console の「統合」ステップで API を把握する

クイックスタートの最後のステップ「統合」を開くと、サンプルコードが表示されます。

「Claude Codeでスキャフォールド」ボタンを押すと、Claude Code にプロンプトが自動で渡されます。

managed-agentsスキルを使用してください(最初に `/managed-agents` を呼び出します)。Anthropic SDKを介して、Anthropicエージェント `agent_xxx` と対話する最小限のアプリの雛形を作成してください。

`client.beta.sessions.create` (環境ID:`env_xxx`)を使用してセッションを作成し、`client.beta.sessions.events.stream` を開いてください。次に、`client.beta.sessions.events.send` を介して `user.message` イベントを送信し、ストリーミングされる `agent.message` のテキストを出力します。

`session.status_idle` が発生したら処理を終了し、エラーが発生した場合は適切に終了するように実装してください。

このプロンプトをClaudeCodeに実行させ、フロントエンドアプリを実装します。

フロントエンドからリサーチを依頼する

フロントエンドアプリの実装が完了しました。 入力欄に調査依頼を送ります。

Claude Console の セッション画面を見ると、フロントエンドから送られたリクエストがリアルタイムでエージェントに渡っていることが確認できます。

Web Fetch・Web Search を並列実行しながら情報を収集し、Notion にレポートを保存。フロントエンドのチャット UI にも応答がストリームで流れてきます。

Notion を開くと、企業リサーチレポートが保存されています。

正直なレビュー

良かった点

① ウィザード形式でコードなしにエージェントを作れる

自然言語でエージェントを説明するだけで、YAML・MCP設定・環境構築まで自動で生成される。コードを一行も書かずにリサーチエージェントが完成した。

② MCP 接続が OAuth ワンクリックで完結する

Notion・Slack・GitHub などを繋ぐとき、従来は API キーの発行・環境変数への設定が必要だった。Managed Agents では「Connect」ボタンを押してブラウザでログインするだけ。トークンの発行・保管・自動リフレッシュまで Anthropic が引き受ける。

③ セッションのトレース機能が充実していてデバッグが容易

ツール呼び出しのタイムライン・引数・実行時間・token 数がひと目で確認できる。「どのステップで遅くなっているか」「Notion への保存が失敗したか」がすぐに分かる。Claude Code でのデバッグより格段にやりやすい。

④ 「Claudeに質問する」でエラー分析・改善提案を即得られる

セッション完了後にボタン一つでそのログを AI が分析し、改善提案をくれる。デバッグの出発点として非常に有効。

⑤ エージェントが自律的にエラーをリカバリーする

ツール呼び出しが失敗しても、エージェント自身が別の手段で再試行する。今回のリサーチでも、あるページの取得に失敗すると別のクエリで検索し直していた。

注意点

① エージェントの「実行」はできる。「トリガー」は自前で用意する

Managed Agents が得意なのは「タスクを受け取って自律的に完了させること」。一方、いつ・何をきっかけに動かすか(トリガー)は自分で設計する必要がある

トリガー

実現方法

手動(フロントエンド)

今回の構成。アプリの送信ボタンで POST /v1/sessions を呼ぶ

定期実行

Cloud Scheduler や cron で API を定期呼び出し

Slack スラッシュコマンド

Slack Bolt でコマンドを受け、バックエンドがセッション作成

Webhook

外部サービスのイベントをバックエンドが受け、セッション作成

Slack や定期実行などを自動トリガーにしたい場合、別途バックエンドサーバーの実装が必要になる。

② ローカル MCP(stdio 型)は使えない

Claude Code の ~/.claude/settings.json に設定するタイプの MCP(stdio 型)は、Managed Agents のクラウド環境では動作しない。公式ドキュメントに「リモート MCP サーバー(HTTP エンドポイントを持つもの)のみ対応」と明記されている。

対応: type: url(Notion MCP・Slack MCP など) 非対応: type: stdio(ローカルで動くカスタム MCP)

独自の MCP を使いたい場合は、それを HTTP サーバーとして公開する必要がある。

③ MCP 認証は「接続」ボタン経由が唯一の正解

Vault 画面からトークンを手動で貼り付けても認証が通らない。ウィザードの「接続」ボタンから OAuth フローを通すこと。これを知らずにハマるケースが多い(実際に筆者もハマった)。

④ 2026年4月時点でベータ版のため、仕様変更の可能性がある

API ヘッダーに anthropic-beta: managed-agents-2026-04-01 が必須で、今後バージョンが変わる可能性がある。本番投入前にドキュメントの最新版を確認すること。

こんな人に向いている

  • AIエージェントを初めて試したい人 — ウィザード形式でコードゼロ。数分で動くものが作れる
  • API キーや認証情報を安全に扱いたい — 認証情報は Vault に隔離され、AI が直接参照することはない。プロキシ経由のアクセスのため、キーが会話ログに漏れるリスクがない
  • サーバーやコンテナを自前で用意したくない — 実行環境の構築・スケーリング・メンテナンスはすべて Anthropic が担う。VPS・Docker・クラウドインフラの知識が不要

こんな人には向いていない

  • Slack や定期実行で自動トリガーしたい — 別途バックエンドの実装が必要。シンプルな自動化なら n8n や Make の方が早い
  • ローカルで動くカスタム MCP を使いたい — stdio 型は非対応。Claude Code の方が柔軟に使える
  • コストを徹底的に抑えたい — セッション時間 × 従量課金。頻繁に回すなら Claude Code + cron の方が安くなるケースがある

Claude Code との比較

Managed Agents vs Claude Code

Managed Agents

Claude Code

動作場所

クラウド(24時間)

あなたの PC

対話的な作業

無人で回し続ける

❌(PC を閉じると停止)

カスタマイズの自由度

月額コスト

従量制

Pro/Max サブスク

シンプルな判断基準:

  • 対話しながら作業したい → Claude Code
  • 無人で定期実行したい → Managed Agents(+ Cloud Scheduler)

Coming Soon:これから来る機能

現在ベータ版のため、まだ使えない機能があります。ただし Anthropic がすでに発表しているものなので、近い将来に登場するはずです。

Outcomes(成功基準の自己評価)

エージェントに「完了条件」を設定できます。条件を満たすまでエージェントが自律的に試行錯誤を繰り返す仕組みです。

例:

成功条件: Lighthouse スコアが 90 以上
→ AI がコード改善 → スコア計測 → 未達なら修正 → 再計測 → 合格まで繰り返す

Multi-agent orchestration(エージェントの分業)

1つの親エージェントが複数の子エージェントに仕事を振る仕組みです。公式デモでは、インシデント対応を例に「コーディネーター → 3人の専門家エージェント → 結果を統合」というフローが紹介されています。

Persistent memory(セッションをまたいだ記憶)

現在は各セッションが独立しており、「先週の分析結果」を次のセッションが覚えていません。Persistent memory が実装されれば「先週比でCVが2%下がった」のような比較分析が自然にできるようになります。

まとめ

正直な感想から言うと、思ったより制約が多かったです。

セットアップ体験は本当に優れています。ウィザードで数分でエージェントが完成し、Notion の接続はボタン1つで終わります。リサーチの出力クオリティも実用レベルでした。この部分は期待通りでした。

致命的な制約が1つあります。エージェントを「動かすこと」はできますが、「いつ動かすか」は自分で用意しなければなりません。 定期実行・Slack コマンド・Webhook 連携は、別途バックエンドを実装して初めて成立します。「インフラ不要」と謳いながら、実際に使い物にするにはインフラが要る。ここが一番モヤッとした点です。

Outcomes(完了条件の自律評価)や Multi-agent orchestration が実装されても、トリガーの問題は残ります。機能が増えても、動かすきっかけを自前で作る手間は変わらないからです。ツールとして面白いのは確かですが、「これで完結する」という感覚にはまだ遠いというのが正直な評価です。今後に期待します。

参考

Grandream

Grandream

株式会社グランドリーム

AI・システム開発のプロフェッショナルチームです。AIエージェント・業務自動化・Webシステム開発などを手がけています。

AIエージェント開発のご相談はお気軽に

PoC段階から本番運用まで一貫対応します。

AI開発について相談する